実話に基づく映画「シャイン」のあらすじと音楽について

映画

あなたは、才能がある人をうらやましいと思いますか?

 

才能はその持ち主にまず喜びを与えますが、その後で喜びに倍する苦しみを与えることもあります。

 

「シャイン」は、ピアノの才能ゆえに波乱万丈の人生を送ることになった、デヴィット・ヘルフゴットという実在の人物をモデルにした感動的な映画です。

 

 

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「シャイン」のあらすじ

激しい雨が打ちつけるある晩、ワイン・バーの窓を叩き店の中に入れてもらう浮浪者風情の男。

 

その男は口ずさみます。

「デヴィット・ヘツプゴッド、変な名前だろ。ヘルプ、ゴッド、神の助けって意味なんだ」

 

彼こそ、幼少時代そのピアノの才能で神童の名をほしいままにしたデヴィット・ヘツプゴッドでした。

 

幼い頃から、ヴァイオリンの心得のある厳格な父からピアノの英才教育を受けます。

 

父の口癖は、「お前は常に勝たねばならない」

「人生は過酷だ。それに耐えて生き残るんだ」というもの。

 

ただ、父親のピーターはユダヤ系のポーランド人であったため、ナチス・ドイツの強制収容所に入れられています。

 

根源的な恐怖を味わうという体験は、ピーターの人間性を破壊していたといえるでしょう。

 

かつてヴァイオリニストを志した自分にとって息子デヴィットは誇らしい存在。

 

でも、その誇りは屈折していて、デヴィットに対して過剰な愛情と所有欲が入り混じってしまいます。

 

さらに、うっすらとした嫉妬までも見え隠れしたりして。

 

もうその時点で、息子デヴィットの神経はほころび始めます。

 

その後、アメリカ留学の誘いがあるも、「家族を壊す気か」などと父親に脅迫めいたことを言われ断念。

 

デヴィットは心の安らぎを求めて、理解者である作家のキャサリンの家に出入りするようになります。

 

キャサリンからは「あなたの演奏は言葉で言い表せないものを表現している」と褒められるのでした。

 

ここで残念だと思ったのは、デヴィットに安らぎを与えてくれる存在として、母親の影があまりに薄かったことです。

 

暴君である父親に黙って従う感じで、息子の防波堤になってやれなかったのは、残念に思いました。

 

さて、全国器楽声楽コンクールで最終選考に残ったデヴィットでしたが、優勝はライバルのロジャーに譲ることになってしまいます。

 

それでも、ロンドンの王立音楽学校から奨学金を授与されることが決まります。

 

またもや父親は血相を変えて怒りますが、今度はロンドン留学の途へ。

 

この時、父親は怒りのあまりデヴィットの記録を収めたスクラップ帳を焼き捨ててしまうシーンがあります。

 

何でいつまでたっても祝福できないのか、器が小さすぎるなどと思ってしまいました。

 

ロンドンにやってきたデヴィットは、ラフマニノフの前でピアノ協奏曲3番を弾いたことがあるというパークス教授に師事。

 

コンクール当日。

デヴィットが弾くのは、もちろんラフマニノフのピアノ協奏曲3番。

 

汗を飛びちらし、何かに憑かれたように弾くその姿は、心身共に限界を超え、演奏が終わった瞬間、舞台の上に倒れてしまいます。

 

それから十数年後、妹のスージーがデヴィットがいるグレンデール精神病院を訪れます。

 

その後、デヴィットは、知り合いの計らいでピアノ付きの部屋で暮らすことに。

 

そして、運命の人、占星術師ギリアンとの出会いが彼の復活劇の幕開けとなるのでした・・・。

 

 

実話と音楽の持つ力の凄さ

「シャイン」ですが、音楽映画として優れていても、才能のある芸術家特有の物語ではないか、と思っていました。

 

でも実際に見て、実話がベースだけあって親近感というか訴えかけてくる力がかなり強い、と感じました。

 

たとえば、もともと繊細な神経の持ち主が、父を喜ばせたいという気持ちが裏目に出て、目に見えぬ重圧により精神に支障をきたしてしまうこと。

 

身内から与えられなかった安らぎを、無意識のうちに年上の女性に求めることなどです。

 

デヴィットは天才だと思いますが、その弱さゆえに観客の近くに降りてきてくれた、この映画に魂を吹き込んでくれた、と感じました。

 

あと、音楽の持つ魔力のようなものも痛感しました。

 

結局、音楽のせいでデヴィットは突然神経衰弱になり、また音楽の力で伴侶と巡り合い復活を遂げるわけですから。

 

 

まとめ

ピアノの演奏など芸術にしても家族愛にしても、強過ぎるものは災いを呼びかねない。

映画を見た率直な感想です。

 

最初に書いたように、才能はその持ち主にまず喜びを与えるが、その後で喜びに倍する苦しみを与えることもある、ということ。

 

その苦しみに見込まれるのは、真に才能のある人に限られるわけですが。

 

デヴィットは、「ともかく、ここまで生き抜くことができて、僕は幸せだ」と言ったそうです。

 

瞬間的に輝くことでしたら、才能の有無が物をいうかもしれません。

 

でも、その後も人生は続きます。

 

才能のある人間こそ生き抜くのは難しい、といえる気がしました。

 

映画と離れますが、昔読んだ本で「車輪の下」がありました。

 

主人公は神童と呼ばれ、才能に恵まれていたはずでしたが、繊細さがアダとなり道を踏み外していきます。

 

結局、生き抜くことができなかった・・・

 

「シャイン」は今まで見てきた音楽映画の中で一番素晴らしいと感じました。

一気に燃え上がるという高揚感はありませんでしたが、いつまでも心を灯してくれる暖かさを提供してくれました。

 

このような映画に巡り合えて幸せです。

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