イタリアで「90年代のチャップリン」と称賛されている人がいます。
映画「ライフイズビューティフル」で、ひとりで監督、脚本、主演をこなしたロベルト・ベニーニです。
この作品は、幼い息子を生き長らえさせるために、収容所生活があたかもゲームであるように装う、という新しい視点から描かれました。
ライフイズビューティフルのあらすじと名言を、自分の感想を交えて紹介したいと思います。
ライフイズビューティフルのあらすじは?
主人公は、ユダヤ系イタリア人のグイド。
詩人の友人と共に、本屋を開く志を抱いて、叔父の住むアレッツォの街にやってきます。
そこで、蜂の毒を膝から吸ってあげたり、自転車で急いで坂を下っている時に、避けきれずに覆いかぶさってしまうなど、偶然の形である女性と知り合います。
それが小学校教師のドーラです。
グイドの本屋出店の計画は、開店の申請に行った役所で役人を怒らせてしまい挫折。
実はこの人は、ドーラの婚約者だったと後でわかります。
ひとまず叔父の勤めるホテルでウェイターの職を得た彼は、持ち前の機転を働かせて、なぞなぞマニアのドイツ人医師から気に入られます。
このドイツ人医師とは、後に強制収容所で再会することになりました。
ある日、ドーラからオペラ見物の予定を聞きだしたグイドは、終演後始めてのデートにこぎ着けます。
グイドの純粋さとロマンチックな人柄は、ドーラの心をとらえ始めていました。
その後、グイドが勤めるホテルで盛大な婚約パーティーが開かれます。
勤務中にそれを見たグイドは卒倒。
コメディ張りのおかしな行動をとってしまいます。
当のドーラですが、婚約パーティーなのに不満げな顔が明らか。
ちょっとした隙にテーブルの下に潜り込んだドーラとグイド。
ドーラから「私を連れてって」と言われたグイドは、意を決して叔父さんの白馬にまたがり、改めて婚約パーティーの会場に。
余興に見せかけたドーラ奪還作戦は見事成功し、二人は結ばれます。
数年後、念願の本屋を持ち、ドーラの間にジョズエという一人息子もできたグイド。
幸せな家庭を築く一方で、周囲ではユダヤ人の権利を阻む人種法が幅を利かせます。
グイドは情勢を楽観視していましたが、ジョズエ5歳の誕生日にグイドは叔父さん、息子と共に強制収容所行きの列車に乗せられてしまいます。
ユダヤ人ではないドーラは連行を免れますが、自らの意志で列車に乗り込むます。
それまでは比較的受け身に描かれていた彼女が、このシーンで自らの考えをはっきり示す凛々しい面を出します。
男女に分けられた強制収容所。
魂の抜け殻になった男たちがひしめくこの様子を息子にどう説明したらいいのか?
そこでグイドは持ち前の機転を発揮して、自分たちはゲームに参加している、という作り話を思い付きます。
ライフイズビューティフルの感想
最初、主人公のグイドが詩人の友人と共に、車で猛スピードでやってくるシーンがあります。「ブレーキが壊れた」と。
その後も、30分近くアメリカンジョークならぬ、イタリアンジョーク?の連発があるので、「これは失敗したかな?」という気持ちに一瞬なりました。
でも、表面上は軽薄を装いながらも、物語の真の深みがはっきりしていくにつれ、その魅力にぐいぐい引き込まれていきました。
上手いなと思ったのは、息子ジョズエを「風呂は嫌い」「シャワーも嫌い」ということにした点です。
後に強制収容所に送られた時に、シャワーを浴びたくない一心で隠れていたので、ガス室に送られずに済み助かります。
また、女性たちが収容所のシャワー(ガス室)に行く前に今まで着ていた服を積み上げるシーンがあります。
その上に子猫が乗っているのを映し出すのですが、子猫がかわいいだけに一層もの悲しさが伝わってきました。
「ライフ・イズ・ビューティフル」で印象に残った名言
映画の最初の方で、グイドが叔父さんを訪ねた時に、一見がらくたのようなものを多数所有する叔父さんがひと言。
「無駄な物こそ意味がある」と。
いかにもイタリア人らしいと思いました。
グイドと一緒にアレッツォの街に来る友人は詩人ですが、邦画だと友達が詩人というケースはない気がします。
日本だと生産性に結び付かない芸術的なことは、イタリアほど重視されませんからね。
そういえば、これより前に同じイタリア映画で「イル・ポスティーノ」がありましたが、ここでも詩人を登場させています。
無駄なところを楽しむ国民性があると思いました。
まとめ
この映画のポイントは、「笑うことで別の視点が生まれる」ことだと思います。
ナチの残虐な歴史的事実を笑いの中で描くなどもってのほか、という非難があがるであろう状況を充分肚に据え、わきまえつつ挑戦したロベルト・ベニーニは、やはり偉大です。
似たような映画で「チャップリンの独裁者」がありました。
でも、ここでは一人二役という、ある意味逃げ場があったと思います。
でも、「ライフイズビューティフル」は、真向切り込みましたからね。
どんな場所、どんな状況の中でも「人生は生きるに値するほど美しい」と。
人間実際にその身に起こらなければ、本当に肌身にしみてわからないのも事実。
人間は「絶望」の中ではなく、「希望」の中にこそ生きるべきだ。
一級のエンタテインメントに仕上げながらそう思わせてくれるこの映画は、幸福な映画です。
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