ベトナム戦争をテーマにした映画というと「ディア・ハンター」や「地獄の黙示録」を挙げる人も多いと思いますが、最高傑作はやはりこの「プラトーン」でしょう。
トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、チャーリー・シーンと3人の主人公がいますが、特に気になったのはウィレム・デフォーです。
ここでは、
- プラトーンのあらすじ
- エリアス役ウィレムデフォーの魅力
について考察します。
また、記事の後半では「プラトーン」の動画を掲載しております。
ぜひ、合わせてご覧ください。
プラトーンのあらすじ
チャーリー・シーン演じるクリス・テイラーは、大学を中退してまでベトナムにやってきます。1967年のこと。
ベトナムを志願したのは、徴兵されていく自分と同学年の若者のほとんどが少数民族や貧しい者に限られていたことから発する義憤からでした。
しかし、ベトナムに着いてすぐに後悔することになります。
いきなり最前線の戦闘小隊に配属されたテイラーにとって、戦争の現実は彼の想像をはるかに超えたものだったからです。
ちなみに、プラトーンは歩兵などの小隊を意味します。
湿気と熱気のジャングル、いつ敵と遭遇するかわからない緊張感、それらがテイラーの心身をボロボロに疲れさせていきます。
そんな中で、小隊の仲間たちの姿がだんだんと浮き彫りに。
トム・ベレンジャー演じる隊長のバーンズは、冷酷非情で、目的のために手段を選ばない男。
ウィレム・デフォー演じる班長のエリアスは、「戦争とはいえ人を殺すことは心に深い傷を残す。だから無益な殺人はしてはいけない」という考え。
幾度かの戦闘を経て、テイラーも一人前の兵隊になった頃、小隊はベトナム人の村を発見する。
ベトコンの基地に違いない、と思ったバーンズは、人間として許せない卑劣な手段で、村民に真実を言うよう強要する。
バーンズのやり方に怒りを爆発させ、殴りかかるエリアス。
回りにいた連中が2人を引き離したが、怒りは収まらない。
「キサマを軍法会議にかけてやる!」と叫ぶエリアスと日頃から彼を心良く思っていないバーンズとの間に決定的なミゾが生じた瞬間です。
これが、後に大きな悲劇をもたらしてしまう・・・
やがて、ベトコンの総攻撃が始まり、悪夢のような激闘の一夜をテイラーは何とか生き残る。
傷つきボロボロになったテイラーは担架に乗せられ、ヘリコプターで戦場を去ることに。
彼の胸を去来するのは、激闘の中で信念をぶつけ合い、憎み合って死んでいったバーンズ隊長とエリアス班長のこと。
テイラーは自問する、自分は両極端の人間のどちら側だったのだろうか?と。
自分は二人の間の子供のようなものだったかもしれない。
ただ、これだけは言える。
自分の戦争が終わって、本当に良かった。
この体験を後世に伝えるためにも、真剣に生きると。
エリアス役ウィレムデフォーの魅力
前述したように「プラトーン」には、3人の主人公がいると思うのですが、一番光っていたのはウィレム・デフォーだと感じました。
この作品の前に、「ストリート・オブ・ファイヤー」で悪役の彼を見ていました。
ですから、この映画を見る前は、ウィレム・デフォーの方が戦争の悪の体現者ではないか、と思っていたわけです。
彼のルックスから察するに、悪役専門のスターと見られる節もあったようですが、オリバー・ストーン監督は作品中の代表的善人として起用しました。
瀕死の状態でジャングルの中をベトコンに追われて、最期崩れ落ちていく天を仰ぐ有名なポーズ。
「ストリート・オブ・ファイヤー」の悪役の印象が強烈だっただけに、この映画でウィレム・デフォーの新たな魅力が浮き彫りになった、と思いました。
ところで、エリアスとテイラーの二人の絡みで好きなシーンがあります。
夜空にまたたく星を見上げて、エリアスが言います。
「星たちは善も悪もなく光っている」と。
テイラーは答えます。「詩人なんですね」と。
極限状態に追い詰められ、人間性もへったくれもないような環境においてさえ、
自分の矜持は捨てない。
美しいものへの憧れを残すようなエリアスが、とても魅力的に感じられました。
まとめ
「プラトーン」は、衝撃作「ミッドナイト・エクスプレス」の脚本でアカデミー賞を受賞したオリバー・ストーンが自らの脚本をもとに監督した作品です。
オリバー・ストーン監督自身、ベトナムでの兵役の体験があり、いつか必ず映画にした、という想いがずっとあったとのことです。
映画会社が自分に監督を任せるまでは、脚本家としての実績を積むことだけに専念したオリバー・ストーン。
それが前述した「ミッドナイト・エクスプレス」「スカーフェイス」「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」と続き、脚本家として不動の地位を築きます。
監督としての手腕が認められたのは、1985年の「サルバドル」があったから。
そうして、やっと自分が本当に撮りたい映画に着手できたわけです。
もっというと、オリバー・ストーンが退役した翌年の1969年に浮かんだ構想がシナリオになったのが1976年。
さらに、映像化するまでに10年間の鎮静期間を要したといいます。
「プラトーン」の映画の内容はもちろん素晴らしいですが、それと同じくらい、この映画に賭けたオリバー・ストーン監督の執念に感服です。
最後に、映画で使われている印象的な音楽について。
冒頭から流れるのは、サミュエル・バーバー作曲の「弦楽のためのアダージョ」、別名「バーバーのアダージョ」です。
これに、「サルバドル」でもタッグを組んだジョルジュ・ドリュリューが、いっそう悲劇性を高めた、といえるでしょう。
音楽と共に、いつまでも心に残り続ける一本の映画となりました。
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