「ミツバチのささやき」でビクトルエリセがアナトレントを主演に

映画

「ミツバチのささやき」は、ミニシアター全盛の1985年に日本公開されました。

1973年製作のスペイン映画なので、公開までに随分時間がかかりました。
大好きな映画で、私は映画館で4回は観ましたね。

ビクトル・エリセ監督はとにかく寡作で、第一作目のこの「ミツバチのささやき」から二作目の「エル・スール」まで10年空いています。

主演のアナトレントは、当時7歳。のちに「カラスの飼育」という映画にも出演しています。

今回は「ミツバチのささやき」を紹介します。

 

 

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「ミツバチのささやき」のあらすじ

1940年頃に、スペイン中部のカスティーリャ高原の小さな村に、移動巡回の映画のトラックが入って行くところから映画が始まります。

 

上映する映画は、怪奇映画の傑作フランケンシュタイン。

子供たちは大喜びで、車にまとわりついてなかなか離れません。

「映画の缶づめだ!」という子供たちのセリフがありました。

 

次に、村人たちと一緒に息をつめて映画に見入っている妹のアナ(アナ・トレント)と姉のイサベルのシーンが映ります。

 

この二人、特に妹のアナが主人公です。

 

スクリーンの中では、少女メアリーが殺され、フランケンシュタインも殺されてしまいます。

 

疑問に思ったアナが、イサベルに尋ねます。

「なぜ殺したの?なぜ殺されたの?」と。

 

イサベルは後で教えてあげる、といって答えません。

その後アナに「知らないのね。ウソツキ」と責められたイサベルは「映画の中の出来事は全部ウソだから、私あの怪物が生きているのを見たもの」と言ってしまいます。

 

要するに精霊で、精霊は体を持っていないので殺されない、

というわけです。

 

この後、映写機の音が蜂の羽音に重なり、ミツバチの世話をする父、フェルナンドのシーンになります。

 

その後、外国にいる兄弟か、内戦でのかつての同志、あるいは恋人?に宛てて毎週のように手紙を駅の列車便に投函し続けている母親のシーンが出てきます。

 

ある日、列車から一人の脱走兵が飛び降ります。

兵士は、何もない草原の遠くの方にぽつんと取り残されたように建っている廃屋に逃げ込みます。

 

そこは、かつてアナがイサベラと二人で訪れた家で、精霊が住む場所と教えられたところでした。

 

その後、一人でその廃屋に出入りするようになったアナは、最初おずおずしながらも兵士にかばんから取り出したりんごを分け与えます。

 

ポスターにもなっている有名なシーンですね。

 

この兵士、結局見つかってしまい、アナが帰ったあと夜中に射殺されてしまいます。

その時、アナが着せてあげた父フェルナンドのコートと、愛用の懐中時計を身に着けたままで。

 

兵士の身柄を検証した署長は、見覚えのある時計を発見し、フェルナンドに通報。

 

訳が分からないフェルナンドは、食事の時に時計のオルゴールを鳴らし、その時のアナの反応で全てを知ることになります。

 

父親から怒られると察したアナは逃げ出し、精霊が住むと思われる森へと向かいます。

 

アナは、以前見た映画のように、湖でフランケンシュタインに遭った?

 

その後捜索隊が派遣され、弱ったアナは救い出されます。

 

最後のシーンでは、カーテンを開け、イサベルに教わった方法で精霊との

交信を試みるアナでしたー。

 

 

「ミツバチのささやき」の感想

あらすじが長くなってしまいましたが、こういう映画はとにかく観るというより、感じる映画だと思いました。

 

ミツバチのささやきの原題は「蜜蜂箱の精霊」で、フランケンシュタインを通して精霊を描いていると感じました。

 

主役のアナ以外の人物、父親、母親、姉のイサベラも外へ出ようとしない。

自分の内側に籠ってしまう。

 

この物語の主題は、少女の通過儀礼だと監督のビクトル・エリセは言っています。

でも、撮る前まではそういう主題だとわかっていなかったと。

 

主題は、自分の無意識の内側に長い間眠っていた、とも語っています。

 

外側から形を与えるというより、内にあるものを見つめてみよう、と最初に考えた、とのことでした。

 

私がこの映画を大好きになった理由も、自分の無意識の内側に眠っていた部分に働きかけるものがあったからだと感じています。

 

何かすごく懐かしい感情が沸き起こりました。

 

また、この映画は西部劇を思わせる俯瞰ぎみのロング・ショットやオルゴールといった小道具の使い方が上手いですね。

 

そして、映像はもちろん音響が素晴らしい。

 

遠くから聞こえる汽車の音、時計の音、それとミツバチの羽音が、時々に応じて見事に配置されています。

 

余計な説明がなく、映像と足音や物音といった音響空間で表現する、至福の時を映画館で味わえました。

 

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まとめ

私がこの映画を観終わってしばらくしてから、ベータビデオでの発売がありました。

 

日比谷のビデオ屋で見つけて、まだVHS版はなかったと記憶しています。

 

こういう映画をリアルタイムで映画館で観られたことは、私の映画ライフにおいて夢のように幸運だったと思っています。

 

これからも自分の内側にある何かにインスピレーションを与えてくれるような映画に出会いたいと感じた次第です。

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